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税務トピックス 記事

■2023年12月19日

解雇無効と金銭解決

 

◆金銭解決の必要性

 「日本では労働者を解雇することが難しい(解雇規制が厳しい)」ということを多くの人が知るようになりました。現状、日本の労働法においては、裁判所が会社に対し、「従業員の解雇を認める代わりに従業員に○○円支払いなさい」という判決(命令)を出すことはできません。なので労働者は裁判において「当該解雇が有効か無効か=自分がまだ会社に在籍しているか否か(労働契約上の地位確認)」を争うことしかできません。つまり、従業員の本音として、「会社に残りたくはないから、納得のいく金銭が貰えれば退職しても良い」と思っていても、その金額を裁判で争うことはできないわけです。

 しかし、実際には会社が従業員に対し、解決金を支払うことにより、紛争が解決するケースは少なくありません。これは、上記の労働者の本音と同様に、会社としても本音は、「ずっと裁判を続けるよりも、金銭で解決したい」と思っている場合も多くあります。そこで裁判所が和解提案という形で「会社が○○円支払うので、従業員もそれで退職に合意したらどうですか」と提案し、当事者双方がそれで納得すれば「合意退職」という形で問題が解決します。その意味で、解雇に伴う金銭解決は実務上多く用いられます。

 

◆解雇解決金を決める要素

 会社として気になるのは、「それでは解決金としていくらくらい必要なのか」ということになるでしょうが、当然、一概に「○○円くらい」と示すことはできません。しかし、過去の裁判例などから、一定の金額決定要素は推測が可能です。

  • 当該解雇が有効か無効か
    仮に決着がつくまで裁判を続けた場合、当該解雇が有効と認められそうな場合には、解決金は低額に、無効となりそうな場合には高額になる傾向があります。
  • 従業員の本音がどこにあるのか
    従業員が本心から「退職したくない、会社に戻りたい」と思い、それを明言している場合には、解決金は高額になる傾向があります。
  • 争いの期間の長短
    当該解雇事案に関する争いが長期にわたるほど、解決金が高くなる傾向にあります。
    その他、転職が容易か否か、正規か非正規か、その会社の在籍期間や直近の収入なども当然決定要素

になります。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年12月19日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年12月19日

“税”であっても税理士業務対象外の印紙税その他の税

 

◆“税”のことなら税理士に聞け!?

 紙の契約書を作成したり、5万円以上の金額を受領したりした際に貼り付けて消印(割り印)を押しておかなければならないのが印紙税です。それを忘れて税務調査で指摘を受けると、最大で納付すべき印紙税×3倍の本税+過怠税が発生します。重いです。

 “この文書の作成には印紙の貼付が必要か?金額はいくらか?”となると関与先会社は、“税のことだから顧問税理士に聞け”となります。問い合わせを受けると何とか調べて回答しますが、じつは税理士はよくわかっていません。業務対象外なのです。

 

◆印紙税は税理士業務の対象としない租税

 税理士が業務の対象とする税は、税理士法で決まっています。「税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、税務代理や税務書類の作成及び税務相談を行うことを業とする」と決められていますが、その対象とされる租税から、印紙税は除かれています。

 万一、印紙税で税務上の問題が発生しても、税理士は納税代理人となれません。

 他に除かれている税金は、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、国際観光旅客税、関税、とん税、特別とん税及び狩猟税並びに法定外普通税及び法定外目的税です。登録免許税や自動車重量税そして関税なども一般の事業会社にもなじみのある税金ですが、税理士業務の対象外です。

 「法定外税」とは、地方税法に定めがなく、各地方自治体の条例で定められる地方税です。具体的には、法定外普通税では「核燃料税(原発のある都道府県)」他、法定外目的税では、「宿泊税(東京都)」、「産業廃棄物税(多くの都道府県)」他があります。

 

印紙税等税理士業務外は会社主体で調べる

 会社の儲けに対して課税される法人税や事業税・法人住民税は税理士業務であることが明らかですが、その他の税金でもわからないことがあったら、まずは顧問の税理士に聞いてみましょう。たぶん、業務対象外と前提を示したうえで、何らかの解説や説明はしてくれるものと思います。

 ただし、印紙税などの税理士業務の対象外の税金については、税理士は責任を負えません。あくまでも会社が主体となって納税関係の対応に当たることになります。不明点は、国税庁のサイトをよく読み、税務署に相談するなどしてください。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年12月19日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年11月13日

日払い給料等の取扱い

 

◆日払い給料と即日払い給料

 最低賃金額の改定により、給料水準を見直す機会が多くなりますが、特に大きな影響を受けるのは、時給計算が主流となるパート・アルバイト等の非正規雇用者のお給料です。また、昨今の人手不足の影響もあり、自社への応募が増えるよう、他社との差別化を図るため、各企業は給料水準を引き上げることの他、給料の支払い方法を柔軟にするなどの工夫をするようになりました。その工夫の代表例が「日払い給料」と「即日払い給料」です。

 ところで「日払い給料」と「即日払い給料」の違いはお判りでしょうか。

 「日払い給料」とは給料計算の締めが1日単位である支払い方法をいい、必ずしも働いたその日に給料を支払う必要はありません。これに対して「即日払い給料」は日払い給料の一形態ですが、働いたその日に当日分の給料を支払う必要があります。

 

◆即日払い給料の注意点

 即日払い給料は、働いた当日にその支払いをする必要があるため、パート・アルバイト等の人から、領収証への捺印をしてもらうなど、給料を受取ったことの確認が必要になります。ですから、これらの人が印鑑を忘れた場合などは、その場での給料の支払いはできないことを事前に伝えておくことが重要です。また、その場合の給料の支払い方法によって、例えば後日郵送等で領収証等のやり取りが行われる場合には、郵便代等の諸経費をどちらが負担するかの取り決めも予めしておくことが必要です。

 さらに、交通費の取扱いについても注意が必要です。仮に交通費を支給しない場合には、パート・アルバイト等の人たちは日払いの給料から交通費を負担することになるため、当初の想定より低い手取りとなる場合があります。交通費の支給の有無も併せて事前に伝えましょう。

 このように「日払い」や「即日払い」の給料の支払には月払いとは異なる事務処理負担が企業にかかることがあります。とはいえこれらをおざなりにして、せっかく獲得した人材と後のトラブルになるのは避けたいところです。企業はこれら事務負担と人手の確保の両方を念頭に置き、バランスの取れた人事対策を行うことが必要になります。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年11月13日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年11月13日

相続税の障害者控除

 

◆制度の概要

 障害者が相続や遺贈で財産を取得したときは、将来にわたる生活費や介護費用等に備えるため、相続税額から一定金額を控除すること(納付税額の減額)ができます。

 障害者控除額は、85歳になるまで1年につき10万円(一般障害者)または20万円(特別障害者)で算出されます。例えば、40歳で父の財産を相続した子が一般障害者の場合、10万円×(85歳-40歳)=450万円の控除を受けることができます。

 

◆既に控除の適用を受けていた場合等

 既に障害者控除を受けたことがあり、今回、新たな相続で再び、障害者控除を受ける場合は、障害者及びその扶養義務者が既に控除を受けた金額の合計額を除いた額を控除できます。

 前の相続で一般障害者であった相続人が今回の相続では特別障害者になった場合(あるいは、その逆の場合)は、最初の相続開始時の障害者区分に対応する障害者控除額と、今回の相続開始時の障害者区分に対応する障害者控除額との合計額から、障害者及びその扶養義務者が既に控除を受けた金額の合計額を除いた額を控除できます。

 

◆障害者控除の利用履歴を確認するには

 障害者控除の適用を受ける場合、障害者やその扶養義務者が前の相続で障害者控除を受けていたかについて履歴の確認を要します。前の相続で申告書がある場合は、その申告書の控えを閲覧します。相続財産の評価額が基礎控除額以下であれば相続税は生じていないので、今回の相続で初めての控除を受けることができます。

 また、障害の程度の履歴は、障害者手帳に記載がないため、都道府県の窓口に個人情報の開示請求が必要になります。なお、障害者に係る個人情報は、要配慮個人情報として不当な差別などの不利益が生じないように、その取扱いに特に配慮が求められます。原則は本人からの請求で履歴情報を取得しますが、障害者の代理人が取得する場合には、細心の注意を払いましょう。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年11月13日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年10月20日

令和5年度地域別最低賃金

 

◆47都道府県で39円~47円の引き上げ

 令和5年度地域別最低賃金改定額が中央最低賃金審議会取りまとめられ公表されました。各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令されます。

 地域別最低賃金の全国整合性を図るため目安額のランクを設けていますが、4区分だったランクが今年度から3区分に変更となり、改定額を見ていくとAからCの47都道府県すべてで39円以上引き上げられ、東京都は時給1,113円と最高です。

 最高額1,113円と最低額893円の金額差は220円です。差の割合は80.2%と8割を超えて地域格差は少しずつ改善しています。

 

◆地方で目安を上回る回答相次ぐ

 近年最低賃金は引き上げの流れが続いていますが、消費者物価の上昇が大きく、昨年10月~今年6月までの消費者物価指数は対前年同期比4.3%で最低賃金引き上げ率3.3%を大きく上回っています。目安を上回る引き上げが賃金の低い地方で相次ぎました。地域経済の活性化や若年層の流出を防ぎ労働人口を確保するには、目安より高い金額が必至と上乗せした回答が24県ありました。引き上げ幅の全国加重平均額は43円で過去最高となっています。

 

◆令和5年度の改定額は以下の通り

  • 39円改定 岩手893円
  • 40円改定 北海道960円 宮城923円 群馬935円 富山948円 山梨938円 長野948円 岐阜950円 静岡984円 三重973円 滋賀967円 京都1008円 奈良936円 岡山932円 和歌山929円 広島970円 山口928円 香川918円
  • 41円改定 栃木954円 埼玉1028円 東京1113円 神奈川1112円 新潟931円 愛知1027円 大阪1064円 兵庫1001円 徳島896円 福岡941円
  • 42円改定 福島900円 茨城953円 千葉1026円 石川933円
  • 43円改定 福井931円  沖縄896円
  • 44円改定 秋田897円  愛媛897円 高知897円 宮崎897円 鹿児島897円
  • 45円改定 青森898円 大分899円 長崎898円 熊本898円
  • 46円改定 山形900円 鳥取900円
  • 47円改定 島根904円 佐賀900円

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年10月20日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年10月20日

電子帳簿保存の電磁的記録媒体

 

◆電磁的記録媒体って何?

 電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類の保存義務者は、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して国税関係帳簿を作成する場合に、一定要件下で、その電磁的記録の保存をもってその書類の保存に代えることができることとされていま す。では、「電磁的記録」は、どんなものに保存するべきでしょうか。国税庁のWebサイトに具体的なものとして挙げられているのは、ハードディスク・CD・DVD・磁気テープ、もしくはCOM(電子計算機出力マイクロフィルム)等とされています。

 ただ、法令解釈を見てみると、「法律上媒体を具体的に限定するような規定は存在せず、保存義務者の任意の選択で良い」とされています。

 

◆ところで磁気テープって何?

 若い人の中には「磁気テープって何だ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。昔は音楽を聴くのに使う「カセットテープ」やテレビ番組などを録画しておく「ビデオテープ」といったものがメジャーでした。磁気を帯びたテープが円形に巻き付けてある記録媒体で、動画等の早戻しを「巻き戻し」と言う方がいるのは、このテープの巻きに由来しているものです。

 最近は一般の方には縁遠いものになりつつある磁気テープですが、データ保存の規格であるLTOテープというものが活躍しています。容量あたりの価格が安く、データ保存時の電力消費量も低いため、大容量データのバックアップ等に活用されているようで、グーグルやマイクロソフトといった大企業も利用しています。

 

◆保存は良いけど提出はNG

 そんな磁気テープですが、令和4年度税制改正において、給与支払報告書やe-Taxによる法人税等の確定申告の添付書類記載事項の提出方法から、磁気テープの提出が除外されています。

 磁気テープは保存性や容量で比較すると他の媒体に比べ優位であるものの、そのデータを読み込むドライブの価格が、とても高いのです。規格が異なると読み込みもできなくなるため、常に最新のドライブを購入し、古いものも使えるように維持する費用を考えると、除外もやむなしといったところでしょうか。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年10月20日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年9月17日

人手不足にならない企業のしていること

 

◆人口減少が止まらない

 総務省の統計では2022年12月時点で日本の15歳から64歳人口は前年同月比0.28%、20万8千人も減っています。これから働く年齢となる15歳未満人口は同9万3千人も減少しています。総人口の推移をみると2019年以降加速して減少しており2023年5月時点の概算では総人口は前年同月比57万人減となっています。

 

◆人手不足にならない企業の方法とは

 そのような中で新型コロナの5類移行を受け採用活動が活発化して人手不足感が高くなっています。このような背景でも人手が不足していない企業もあり、帝国データバンクの調査で「人手が不足していない要因」を調査すると、主に次のような施策を施している企業の姿が見えてきました。

①賃金、賞与の引き上げ(51.7%)
②働きやすい職場環境作り(35.0%)
③定年延長やシニアの再雇用(31.2%)
④福利厚生の充実(26.6%)
⑤公平で公正な人事制度(22.0%)

 上記②の「働きやすい職場環境」とは清潔保持、休憩スペース、社内相談窓口の設置などです。④⑤は労働者自身が成長を感じられたり、安心できる職場にあるという施策です。他には個人の事情で長時間働けない人材にはそれに応じた働き方を提供する弾力性も求められるでしょう。

 

◆人材に心配りが求められる時代

 世界的な物価高騰を受け実質賃金が低下する中、賃金や賞与の引き上げに取り組めない企業(取り組む姿勢のない企業)は従業員満足度や安心感が下がり優秀な人材は流出します。運よく採用できても人を育てることをしないと早期離職につながります。ただ賃金がすべてではありません。

 「人は石垣、人は城」という昔の言葉がありますが、会社を支える一番の力は信頼できる人の力です。会社を信頼してくれる従業員が一人でも多く育つよう企業は自らの進む先を示しつつ率先して変革し、働く環境整備にも配慮が必要でしょう。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年9月17日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年9月17日

インボイス制度:10月1日前後の取引の適用関係に注意!

 

 2023年10月1日から開始されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)ですが、同じ取引であっても、売手における売上の計上時期と買手における仕入れの計上時期が必ずしも一致しない場合があります。

 

 例えば、固定資産の販売において、売手が出荷基準により2023年9月に課税売上を計上し、買手が検収基準により2023年10月に課税仕入れを計上するケースがあります。

 この場合、売手においては、インボイス制度の開始前に行った取引(課税資産の譲渡等)であることから、買手からその取引について適格請求書の交付を求められたとしても、その取引に係る適格請求書の交付義務はありません。

 このため、買手においては、原則として、売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が10月1日以後のものとなる取引から、仕入税額控除の適用を受けるために適格請求書等を保存する必要があります。

 

 上記のように、売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が2023年9月となる取引については、買手は区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。

 

 なお、電気料金等のように検針日基準で売上及び仕入れを計上している場合、検針した期間に10月1日を含んでいても、検針日基準で売上及び仕入れを計上している限り、10月1日前後の取引を厳密に区分する必要はありません。

 

 また、未成工事支出金及び建設仮勘定に係る課税仕入れの計上時期については、建設工事等の目的物の引渡し又は完成の日の属する課税期間の課税仕入れとすることができ、その引渡し等の日(課税仕入れを計上する日)が2023年10月1日以後であっても、その未成工事支出金等の基礎となる課税仕入れに含まれる10月1日前の取引については、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。

 

 その他、短期前払費用に係る課税仕入れの計上時期については、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れとすることができ、短期前払費用に係る取引に係る売手における課税売上の計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が2023年10月1日以後であっても、買手において同日前までに課税仕入れを計上しているものは、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。

<情報提供:株式会社エッサム>

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上記の記載内容は、2023年9月17日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年8月21日

海外在住で日本企業にリモート勤務の所得税と社会保険

 

◆リモートワークが進むと海外在住もOK!

 リモートワークでの勤務が普及し、業種によってはフルリモートで居住地が会社の近くでなくとも問題ないというところも増えています。極端な話、海外在住者と雇用関係を結び国外に在住のまま働いてもらうこともできます。日本国内の採用市場ではこれまで絶対数が少なく人材難だった、英語ができるITエンジニアなどは、海外から人材を採用する方針も選択肢の一つとなっています。

 

◆海外からリモート勤務者の所得税の課税

 話を単純化するため、前提として、リモートで日本勤務するITエンジニアは、これまで日本に住所も居所も持ったことがない日本の所得税法上の非居住者でかつ役員とはならない労働者とします。そして、勤務者は日本の会社への出社(=日本に来ること)は一切不要とし、給料は日本から海外の本人の銀行口座に直接支払われるものとします。さらに、勤務者の居住地国と日本との間には租税条約があり、給与所得者は居住地国でのみ課税されるものとします。

 給与は日本から国外の本人口座に送金されますが、日本で勤務を行わないため国内源泉所得とはならず、給与の支払いの際の日本の所得税の源泉徴収は不要です。年末調整も対象外です。日本では課税されないため日本での確定申告も不要です。

 課税関係の精算は勤務者本人の居住地国で確定申告をすることになります。

 

◆海外リモート勤務者の社会保険等の扱い

 海外の人を海外在住のまま日本の企業が雇用することはまだ法整備がなく、今後変わる可能性はありますが、いまのところ、給与が日本の企業から支払われていれば、社会保険は適用されるものと考えられています。ただし、介護保険には日本での居住要件があるので加入できません。

 労働保険は、労働災害保険のみ特別加入制度(海外派遣者)が適用できれば対象となれます。雇用保険は、海外在住の場合、現地採用と同じ扱いとなり雇用保険には加入できません。

 今後、海外リモート勤務をする実例が増えてくると、法整備も後追いで対応されてくるものと思われます。適用の際は、専門家および年金事務所に相談の上、実態とその時点での法解釈に従った手続きが必要となります。

<情報提供:株式会社エッサム>

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上記の記載内容は、2023年8月21日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年8月21日

駐車場賃貸のインボイス

 

 駐車場の賃貸借契約は、通常、1年~2年間の契約期間で作成されますが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の運用が始まる令和5年10月1日をまたぐ契約も多いのではないでしょうか。

 

◆駐車場賃貸は、消費税課税が原則

 駐車場事業を経営する場合、砂利を敷く、ロープで区画割りする、アスファルト舗装するなど施設を整備して貸し付けます。施設の利用に伴って土地が使用される場合、消費税が課されます。課税事業者は、令和5年10月以降、賃貸借契約書や請求書、領収書等にインボイス(適格請求書)としての要件を備えさせて保存しなければなりません。

 

◆契約書を通知書で補完

 契約書、請求書等をそのままインボイスとする場合、登録番号、税率10%に対応する税込価額または税抜価額、消費税額等の明記が必要ですが、令和5年10月前に作成する契約書には、これらの項目の記載は求められていません。そもそも、駐車場賃貸では、賃料の収受に際し、通常は請求書や領収証を交付しないでしょう。

 そこで貸主のインボイス交付義務・保存義務(借主のインボイス保存義務)に対応させるため、請求書にかえて、駐車場事業者は、インボイス番号(登録番号)等を記載した通知書を別途作成して契約書を補完させて借主に交付すること、領収証にかえて、借主は銀行の支払記録と賃貸借契約書や通知書で補完する方法が国税庁のインボイス特設サイトに案内されています。

 

◆口座振替と口座振込

 口座振替の場合、借主は、インボイス番号の通知書で補完された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の日付が分かるもの)を併せて保存することにより、インボイス保存義務が満たされます。

 口座振込の場合は、借主は、インボイス番号の通知書で補完された契約書とともに銀行の発行する振込金受取書を併せて保存することにより、インボイス保存義務が満たされます。

 

◆事務所賃貸、税理士、社労士も取扱いは同じ

 なお、仲介会社の作成する令和5年10月以降の賃貸借契約にインボイス番号等の記載がない場合も上記の通知書で補完する対応が必要になります。また、この取扱いは、事務所賃貸はもちろん、税理士、社労士など士業が顧問先と締結する契約についても同様の対応となります。インボイス制度開始前に業務フローを確認しておきましょう。

<情報提供:株式会社エッサム>

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上記の記載内容は、2023年8月21日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年8月2日

上場株式の配当所得課税 課税方式の選択は?

 

◆個別に課税方式を選べなくなった

 上場株式の配当所得については、令和4年までは所得税と住民税の課税方式を選択できました。例えば所得税については総合課税として申告し、住民税については申告不要制度を選択する、といった具合です。このように申告方式を選択することにより、所得税は総合課税の場合利用できる配当控除を用いて実効税率を下げ、住民税は効率の悪い配当控除を使用せず分離課税の税率を適用する、といった節税が可能でした。

 令和5年分の所得税申告(住民税については令和6年分)より、所得税と住民税の課税方式は一致させなければならなくなりました。

 

◆総合課税申告有利判定は残るが

 配当控除がすべて所得の10%で適用できるという前提で、課税所得695万円以下の所得税率20%までの場合、所得税・住民税の配当控除と税率を加味すると、配当所得を総合課税で申告した方が基本的には有利となりますが、以前はできていた住民税側の分離課税の税率が利用できないため、令和4年以前と比べるとお得になる割合は下がってしまいます。

 

◆税率以外も考慮して検討を

 特定口座源泉徴収ありで確定申告不要の配当所得の場合、そのままであれば国民健康保険料の計算に用いる所得として扱われませんが、申告をしてしまうと所得計算に入るため、結果として国民健康保険料の値上がり分で節税効果がなくなるばかりか、割高になってしまう可能性もあります。

 上場株式等の譲渡損失との損益通算や、繰越控除がある場合などは分離課税で申告した方が有利な場合もありますが、申告不要の配当所得を申告すると総課税所得額へ加算されるため、配偶者控除や基礎控除額の算定に使用する本人の所得額に影響があるため注意が必要です。

 その他、住宅ローン控除等で所得税が少ない場合、配当控除目当てで損得勘定をしていたのに実際には控除されるべき税金がない、といったことも考えられますし、申告するしないの選択は所得税率以外の要素も考慮しなければならないため注意が必要です。

<情報提供:株式会社エッサム>

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上記の記載内容は、2023年8月2日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年8月2日

職場つみたてNISAと賃上げ税制

 

◆事前照会に対する文書回答

 国税局は、納税者や同業者団体から個別の取引等に係る税務上の取扱いについての照会に対して、文書による回答をしています。今年3月に金融庁から照会があった事例を国税庁Webサイトで公表をしていますが、内容としては従業員に対して職場つみたてNISAの奨励金を給付した場合、賃上げ促進税制の対象になる「給与等」に該当するか、というものです。国税庁は「その考えで差し支えない」と回答しています。

 

◆職場つみたてNISAとは?

 職場つみたてNISAは、事業主が証券会社などのNISA取扱い業者と契約して、希望する従業員の給与から毎月天引き、もしくは口座振替をした金額を特定の金融商品に投資していく福利厚生制度の1つです。従業員からすれば職場という身近な場で資産形成ができ、企業にとってはあまり導入コストをかけずに福利厚生制度が導入できるメリットがあります。今時の財形貯蓄、と言っても良いでしょう。

 

◆賃上げ促進税制とは?

 賃上げ促進税制は、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。中小企業の場合、雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加(大企業の場合は3%以上増加)で適用ができ、支給額が前年比2.5%(大企業4%)以上、教育訓練費が前年比10%(大企業20%)以上増加している場合は税額控除率が上乗せされます。

 

◆会計上「福利厚生費」でも給与等

 職場つみたてNISAを導入するにあたって、奨励金を事業主が出す場合、会計上はどのような科目で費用計上するかは限定されていないため、給与以外の例えば福利厚生費として費用計上することもできます。ただし、奨励金の性質から鑑みれば、これは賃上げ促進税制の対象になる「給与等」に該当しますよね? というのが金融庁の照会内容です。国税庁も「その通りです」と答えているため、奨励金も含めて賃上げ促進税制の給与等の増加額を計算して良いということです。なお、給与等に該当するため、支払い額には所得税がかかります。

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今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年7月18日

インボイス不登録免税業者との取引での損失額

 

◆インボイスが始まるけれど

 2023年10月から、インボイス制度(適格請求書保存方式)がスタートします。インボイス番号の確認や取得状況についての問い合わせが来ている、との話をよく耳にするようになりました。

 平成28年度 与党税制改正大綱 (参考資料②-2)では、国内823万の事業者のうち、513万者余(63%)が免税事業者で、うち435万が個人の免税事業者、77万が法人の免税事業者とされていました。すなわち、インボイス制度導入により、日本国内の63%もの事業者が影響を受けるのです。

 ただし、免税事業者と言えど、消費税を請求する権利が消費税法上ありますし、また、仕入消費税分を転嫁しないで自己負担とする義務などありません。インボイス制度が消費税請求の権利、転嫁の権利を踏みにじるのだとすると、それは由々しきことです。

 

◆8割特例を用意して損の緩和と受容奨励

 免税事業者のままでは、インボイスを発行できないので、免税事業者と取引する課税事業者は、消費税の仕入税額控除が適用されなくなり、損をすることになる、と言われています。

 その損を緩和せんとするのが、8割特例です。インボイスのない免税事業者との取引額の消費税10%消費税について、8割にする、というものです。

 消費税込みで110万円の取引とすると、仕入税額控除は10万円の8割80,000円となり、控除除外された20,000円は経費として損金算入され、法人税等の負担税率が30%だったとすると、6,000円の法人税額等の減少効果を生み、合わせて86,000円の税負担軽減となるので、免税事業者との取引で損をする額は、10万円-86,000=14,000円です。消費税率10%の中の14%部分です。税抜取引額の1.4%です。

 

◆2割特例では免税事業者が損を被る

 免税事業者がインボイス発行事業者となった場合には、2割特例が用意されていて、負担する消費税額は、消費税額10万円の場合、その2割の2万円です。法人税負担まで考慮すると上記と同じく1.4%です。

 免税事業者が2割特例を適用すると、その取引相手は仕入税額控除100%可能です。

 どちらかに1.4%の税負担を負わせようとするインボイス制度ですが、そんなに大きな金額の負担ではないので、当面は、いずれの選択になろうと、取引への変化などはなさそうに思われます。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年7月18日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年7月18日

「労働契約法」と「労働契約」

 

◆労働契約法

 労働契約法が2008年3月1日に施行され15年が経過しました。労働契約法は労働者と使用者(以下「会社」とします)が自主的な交渉をして、労働契約が合意により成立する合意の原則、その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、労働者の保護を図り、併せて労働者と会社との間における労働関係を安定させること等を主な目的としています。

 

◆民法との関係

 労働契約法は、民法第3編(債権)第2章(契約)第8節(雇用)についての特別法になります。つまり、労働契約法と民法で異なる規定がある場合には、特別法である労働契約法の規定が優先されることになります。例えば民法627条1項では、期間の定めのない雇用契約について、労働者に2週間前の予告期間をおいての解雇の自由を認めていますが、労働契約法16条では、会社が労働者を解雇する場合、解雇の理由が客観的に合理的な理由を欠き、また、その理由での解雇の処分が、社会通念上相当であると認められない(処分が重すぎる)場合には、その解雇は無効とするとしています。従って、民法で認められる予告期間をおいての解雇も、労働契約法が優先することにより、無効となる場合があります。

 

◆労働契約とは

 労働契約そのものの定義はありませんが、労働契約法6条から、労働者と会社それぞれに次の権利を有し、また義務が課せられると考えられます。
・労働者の権利及び義務:賃金を受け取る権利と労働を提供する(働く)義務
・会社の権利及び義務:労働の提供を受け取る(働いてもらう)権利と賃金を支払う義務

 なお、ここでの労働者の義務(労働提供義務)についての考え方は重要です。義務の履行(債務の弁済)は民法で、「債務の弁済は債務の本旨に従ってなされなければならない」とされています。つまり、労働者は、会社との合意により成立した労働契約の内容(就業場所、労働時間、賃金など)で働かなければならないことになります。

 さらにわかりやすく表現すれば、労働者は労働契約で決められた内容の範囲での会社の命令に従い働かなければならないとなります。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年7月18日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年5月28日

インボイス制度開始:10/1 登録事業者の簡易課税選択届

 

◆急激な事務負担の緩和に簡易課税の検討を

 インボイス制度の開始に際して、取引環境の問題から、登録事業者を選ばざるを得なかった事業者も少なくないと思われます。これまで消費税に関しては何もしなくともよかった事業者もいざ登録事業者となると、適格請求書を発行し、会計帳簿では課税区分と税抜き経理を行い、消費税の申告書を作成し、消費税の納税を行うことになり、一挙に事務負担等が増えることになります。

 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。簡易課税制度の採用による事務負担の軽減等も検討してみましょう。

 

◆本来の簡易課税制度選択届の提出期限

 簡易課税制度を選択するには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に届出しなければなりません。提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までとされています。

 課税事業者は、簡易課税制度を採用した方が自社にとって有利なのか否かを検討し、期限までに提出するか、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し本則課税に戻るかします。届出書の提出期限遵守は重要な手続きであり、税理士損害賠償保険の事故事例としても件数・支払金額とも大きな割合を占めている要注意手続きです。

 

◆インボイス制度導入に伴う経過措置あり

 今回のインボイス制度導入に際してはいくつかの経過措置が取られています。その一つとして、免税事業者が令和5年 10 月1日から登録の効果が生じ課税事業者となるということがあります。この経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます。

 初めての課税事業者となる事業者にとって、有利・不利の検討を、その課税期間開始後もできることはありがたい制度です。経過措置が当てはまるか否かを課税期間の開始前までに行い、当てはまるのならば使いたいものです。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年5月28日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年5月28日

生命保険契約に関する権利

 

 家族の将来の生活保障と資産形成のため生命保険を掛けている場合、保険の対象としていた被保険者が亡くなる前に、保険料を支払っていた保険料負担者が亡くなると思わぬ課税を受けることがあります。

 

◆生命保険契約の権利に課税される要件

 次の要件に該当する場合、生命保険契約の承継者には、取得した生命保険契約に関する権利に解約返戻金相当額で相続税が課されます。

 1.解約返戻金のある生命保険であること
 例えば夫が妻に生命保険を掛けます。掛け捨ての保険ではなく、解約返戻金のある終身保険や養老保険で、保険契約者は夫、保険料も夫が負担しているとします。 2.保険料負担者が先に死亡すること
 保険金の支払事由(被保険者である妻の死亡、あるいは満期到来)の発生前に保険料負担者の夫が死亡しました。

 

◆契約の承継者に相続税が課税される

 妻に掛けた生命保険契約は解約しない限り、妻が死亡するまで継続するので、夫の相続人となる妻と子の誰かが契約を引き継ぐことになります。契約を引き継いだ者は、保険契約を解約すると解約返戻金を受けることができます。そこで契約者の地位を承継する相続人を遺産分割協議によって決めると、承継者には解約返戻金相当額で相続税が課されます。

 

◆遺産分割協議を要しない場合

 上記のケースで保険契約者が妻であった場合、保険料負担者である夫の死亡前から保険契約者の地位は妻にあるので、契約者の承継は遺産分割協議の対象とはならず、夫の死亡により、妻に相続財産の取得があったとみなされ、相続税が課されます。

 

◆生命保険契約の名義変更に注意

 被保険者が死亡する前に、生命保険契約を名義変更する場合、名義変更しただけですぐに課税されることはありません。その後、保険料負担者である契約者が死亡すると、相続人には上記のように相続税が課されます。

 ところで保険契約を変更した時から相当期間が経過し、契約者も死亡している場合、誰が保険料を負担していたか判明しないことがあります。預金通帳や生命保険会社の記録から保険料支払者を推定することになりますが、保険会社でも調査や解約返戻金の算定に時間がかかります。保険契約は相続開始前に整理して、課税関係をきちんと把握しておくと良いですね。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年5月28日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年5月9日

社会保険の「年収130万円の壁」注意点や例外

 

◆「年収130万円の壁」が国会で議論される

 岸田総理大臣は、今年2月の衆議院予算委員会で「年収130万円の壁」について、「制度を見直す。どんな対応が出来るのか、幅広く検討する」と発言しました。

 「年収130万円の壁」とは、社会保険被保険者である給与所得者の配偶者については給与所得者が負担する保険料のみで、配偶者の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことです。

 社会保険の扶養から外れないよう、配偶者のパート社員が就業調整することによる人手不足への影響が問題とされています。

 昨年10月以降、社会保険被保険者101人以上の企業では、①週の所定労働20時間以上、②月額賃金8.8万円(年約106万円)以上、③2か月以上雇用の見込、④学生でない、の4つの条件を満たす場合、パート社員自ら社会保険被保険者となり、社会保険の扶養から外されています(来年10月以降51人以上企業に拡大予定)。

 

◆通勤手当等も年収に含みます!

 通勤手当等も年収に含みます!

 通勤手当を支給されているパート社員は多いと思いますが、通勤手当を除いて年収130万円未満でも、含めると 年収130万円を超える場合、扶養から外れてしまいます。

 年収130万円(標準報酬月額11万円)の場合、健康保険料は月約6,600円(介護保険料含む)、厚生年金保険料は約1万円の自己負担増(給与控除)となります。

 

◆60歳以上・障がい者は「180万円の壁」

 意外と見落とされやすいのが、60歳以上や障がい者の方は、年収130万円ではなく、年収180万円まで社会保険上の扶養に入れる「180万円の壁」とされています。

 社会保険料負担に関しては、高齢者や障がい者の雇用は、企業に有利となります。

 なお、被扶養者は被保険者の年収の半分未満という条件もあり、扶養する方の年収が低い場合は、注意が必要です。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年5月9日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年5月9日

相続の基本 遺言書と遺留分

 

◆自分の財産をどうするのか書き残す

 遺言書は自分の財産を誰に、どれだけ残すのかという意思を書面にしておくものです。遺言には大きな効力があり、遺言書さえあれば、遺産は基本的に遺言書通りに分割されます。スムーズに相続ができるようになり、遺産の分け方をめぐっての相続人の争いも少なくなるので「争続にならないために」といったキャッチコピーでお勧めされることも多いようです。

 

◆3種類の遺言書

 遺言書には3つの種類があります。

①自筆証書遺言:自分で記述し、証人が不要、保管も自分でできるので手軽に作成でき、費用がかからないのがメリットですが、形式に厳格なルールがあるため、無効になりやすいデメリットがあります。また、自筆証書遺言の保管者や発見した相続人は遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりませんので、相続人にとっては若干の負担となります。ただし、令和2年7月から運用が開始された法務局への自筆証書補完制度を利用した場合は検認の必要はなくなります。

②公正証書遺言:公証役場に依頼し、公証人が記述する遺言書です。公証役場で原本を補完してくれるので、紛失等のリスクが少なく、検認も不要です。また、公証人に自宅や病院に出向いてもらって作成ができるため、文字を書けない状態でも作成が可能です。ただし、証人が2人必要となり、自筆証書遺言に比べると作成費用や手間がかかります。

③秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書です。遺言書があるという事実を確実にするのが目的です。遺言の内容をあまり知られたくない場合等に使うようですが、無効になりやすい、紛失や隠蔽、発見されないリスクがあり、あまり使われていません。

 

◆遺言は遺留分に気をつけて

 遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことができない遺産の一定割合のことです。

 遺留分があるのは、配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)で、兄弟姉妹は遺留分を有しません。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年5月9日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年4月21日

昨年の実質賃金0.9%減額

 

◆現金給与総額は

 毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報により昨年支払われた現金給与総額と実質賃金との関係を見てみると、現金給与総額は前年比2.1%増の326,157円となり1991年以来31年ぶりの伸び幅となりました。所定内給与で見ると一般労働者は318,904円、1.3%増、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,242円、1.6%増です。

 

◆実質賃金は

 一方物価の変動を反映した実質賃金は前年比0.9%減少と2年ぶりのマイナスとなりました。現金給与総額はコロナ禍で落ち込んだ経済の回復を背景に2.1%増加しました。給与総額のうち基本給に当たる所定内給与は1.2%増、残業代などの所定外給与は5%増となりました。賞与などについては5.1%増と大きく伸びています。しかし、賃金の実質水準を算出する指標となる物価が3.0%の上昇となったため実質賃金はマイナスとなりました。

 働いている形態で見ると正社員等一般労働者の給与総額は2.3%増、パートタイム労働者は2.6%増でした。コロナ禍で落ち込んでいたボーナスが4年ぶりに増加するなど給与は増加傾向にありますが、物価の上昇に追い付いていません。

 

◆労働時間と雇用状況はどう変化?

 労働者一人平均の総実労働時間は昨年比0.1%増の136.2時間でした。そのうち所定内労働時間は0.3%減の126.1時間、所定外労働時間は4.6%増の10.1時間となりました。

 雇用状況では常用雇用者は昨年比0.9%増の5,134万2千人でした。就業形態別に見ると一般労働者は0.5%増の3,513万人、パートタイム労働者は1.9%増の1,621万2千人でした。

 賃上げして従業員に報いたいという気もちは経営者の変わらぬ思いでしょう。しかし物価上昇に追い付かない状況ではなかなか経営努力が目に見えにくいということかもしれません。

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(注意)
上記の記載内容は、2023年4月21日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年4月21日

財産債務調書と国外財産調書

 

◆財産を持っていたら知らせなさい

 ある一定額を超えた財産を持っている場合、調書にその内容をまとめて税務署に提出しなければならない制度があります。それが「財産債務調書制度」と「国外財産調書制度」です。

 財産債務調書制度は①その年の退職所得を除く所得金額の合計額が2,000万円超、かつ②その年の12月31日において合計3億円以上の財産か、1億円以上の国外転出特例対象資産を持っている方が対象で、財産債務調書の提出が必要です。令和5年以降は上記条件の他に「10億円以上の財産を持っている」場合も対象になります。

 国外財産調書制度はその年の12月31日において、5,000万円を超える国外財産を有する非永住者以外の居住者が対象です。

 

◆どちらもアメとムチを用意しています

 調書に記載がある財産に関して、所得税等・相続税の申告漏れが生じた場合、その財産に課される過少申告加算税や無申告加算税が5パーセント軽減されます。

 逆に、調書の提出がない場合、または提出された調書に記載すべきものを記載しなかった場合、その財産に課される過少申告加算税や無申告加算税は5パーセント加重されます。

 また、国外財産調書については、偽りの記載をして提出した場合や、提出をしなかった場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあります。ただ、意図的な虚偽記載や不提出ではなく、うっかり提出していなかった、といった事情であれば、その刑を免除することができるとされています。

 

◆どのくらい軽減・加重措置を受けている?

 国税庁が発表している資料によると、令和3年分国外財産調書の提出件数は12,109件で、令和3事務年度における過少申告加算税及び無申告加算税の特例措置は
軽減措置:135件 41億9,893万円
加重措置:293件 439億2,378万円
だったということです。

 また、少し古い記事ですが2019年には国外財産調書不提出で国税局が告発しているのをニュースサイトで確認できます。

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上記の記載内容は、2023年4月21日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年4月4日

減価償却の基本

 

◆はじめに

 減価償却は、高額な機械設備等の経年劣化が生じる資産の購入費用を、購入した年にまとめて経費計上するのではなく、使用可能年数に応じて分割して経費計上することを言います。

 減価償却は19世紀の鉄道会社が発明したといわれています。車両・線路・駅舎・鉄橋等、鉄道会社は固定資産が多く、当時は車両や線路の質も今よりは悪かったため壊れやすく、鉄道事業の運営にはコストがかかるため、投資家からの出資がなければ事業運営は困難でした。投資家が安定した配当を目指し投資を行うため、鉄道会社は減価償却を生み出し、年ごとに費用計上を行い「安定して利益が出ていますよ」という説明をしたのでしょう。

 

◆減価償却できるもの、できないもの

 減価償却の対象は、有形・無形の固定資産のうち10万円以上のもので、かつ年を重ねて消耗して価値が減ってゆくものです。有形の資産の例は建物、機械装置、車両運搬具等です。また、無形の資産とは、ソフトウェアや営業権等となります。

 固定資産でも「消耗して価値が減ってゆく」が適用条件となっているので、土地や絵画、骨董品等の時間が経っても価値が減少しない資産は減価償却できません。また、使用可能な期間が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものについても減価償却ができません。

 なお、20万円未満10万円以上の減価償却資産は一括償却(3年間)可能、中小企業者等は30万円未満の減価償却資産は300万円を限度として全額損金算入可能等の制度があります。

 

◆減価償却資産の耐用年数とは

 減価償却は使用可能年数で分割して年ごとに必要経費を計上しますが、この使用可能年数は、法定耐用年数として公的に決まっています。

 素材や用途に応じて耐用年数が異なるものもあり、例えば「事務所用の建物」の場合、
木・合成樹脂 24年
木骨モルタル 22年
鉄筋コンクリ―ト 50年
金属製 骨格材の肉厚により22~38年
などと様々です。

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(注意)
上記の記載内容は、2023年4月4日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年4月4日

デジタル通貨での給与支払いを導入する手順

 

◆はじめに

 厚生労働省はデジタル通貨での給与支払い(以下「本制度」)について、2023年の4月に解禁することにしています。実際に導入するかしないかは会社ごとに制度のメリット及びデメリットを考慮して慎重に検討することが必要でしょう。今回は実際に導入を決めた場合の導入までの流れをお話しします。

 

◆デジタル通貨での給与支払い導入の流れ

①従業員への意見聴取

大前提として本制度を導入するかしないかを決めるのは会社です。本制度導入前に従業員から「自分にはデジタル通貨で振込んで下さい」と要望があっても会社は断ることができます。しかし若年層を中心に本制度を希望する従業員が増えることも予想され、今後の既存従業員の定着や新規の採用等を考えると、会社として導入を検討する必要がでてくるかもしれません。そこで、まずは(導入のメリット及びデメリットを考慮した後)既存の従業員に「デジタル通貨での給与の支払いについて」意見を聞いてみることは重要になります。希望者が多数いる場合には、より導入する方向へ舵を切る必要があるかもしれませんし、そうでない場合には、そのまましばらく様子を見るということも考えられます。

②従業員への説明と同意

本制度を導入するには、従業員に次の各項目について説明をして同意を得ることが必要になります。なお、説明については、厚生労働大臣の指定を受けた指定資金移動業者に委託をすることが可能になりますが、同意については会社自身が従業員から得る必要があります。
(ア) 給与の支払い方法
(イ) 資金移動業者口座の資金保全
(ウ) 資金移動業者が破綻した場合の保証
(エ) 資金移動業者口座の資金が不正利用された場合の補償
(オ) 資金移動業者口座の資金を一定期間利用しない場合の債権(アカウント)の有効期限
(カ) 資金移動業者口座の資金の換金性

③規程の整備

給与の支払い方法の変更は、労働契約の内容の変更になりますので、就業規則や労働契約書の内容の変更や、新たな労使協定の締結が必要になります。

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上記の記載内容は、2023年4月4日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年3月18日

相続時精算課税の普及が戦略

 

◆相続時精算課税制度は評判悪し

 相続時精算課税制度は、贈与額が2500万円に達するまでは贈与税がかからず、2500万円を超えた部分は贈与税率20%で課税される制度ですが、贈与者死亡時の相続税は、相続時精算課税の適用を受けた受贈財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額との合算額を基に計算し、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。

 なお、次に掲げるようなデメリットがあり、この制度の積極的な活用の呼びかけは少なく、利用者の数も限られていました。

 

◆現行相続時精算課税制度のデメリット

(1)暦年課税制度に戻ることが出来ない

(2)基礎控除の制度がなく110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要

(3)少額でも贈与税申告書の提出漏れには20%の加算税

(4)受贈財産が災害等で滅失しても考慮されない

(5)不動産だと小規模宅地の特例が使えず、不動産取得税の負担があり、登録免許税も相続時より高い

(6)相続税の物納には使えない

(7)贈与者である祖父の死亡前に相続時精算課税制度適用者である父が死亡したような場合、その相続人となる子は、父の相続に係る相続税の負担と、承継した父の相続時精算課税制度適用による納税義務の負担との二重課税となる

 

◆デメリット部分解消への税制改正

 今年の税制改正で、上記の(2)~(4)について見直しがなされることになりました。

1.相続時精算課税制度内に110万円の基礎控除制度が設けられ、毎年の特定贈与者からの贈与額からその基礎控除が引かれるとともに、その範囲内の贈与は申告不要とされ、相続に際しては、課税価格に加算される相続時精算課税受贈財産の価額は、先の基礎控除をした後の残額となります。110万円以下の毎年贈与だったら、暦年課税の3年内贈与加算相当部分も圧縮され、より優遇です。

2. 相続時精算課税で受贈した土地・建物が相続税申告時までに災害により滅失等の被害を受けた場合は、相続税の申告での課税標準への加算額から当該被害額を減額することとされました。

 今後、相続時精算課税制度の利用が大幅に増加することが予想されます。  

<情報提供:株式会社エッサム>

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上記の記載内容は、2023年3月18日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年3月18日

1月以降退職者の住民税特別徴収の継続と一括徴収の分岐

 

◆退職後に勤務が継続か否かで変わってくる

 個人の住民税は、その年1月1日居住の市町村から前年の所得を基に課税されます。納税は、給与所得者の場合、給与支払者により、6月から翌年5月までの給与から「特別徴収」され納税されます。

 退職した場合、退職日が6月1日から12月31日までであるときは、退職の月までは「特別徴収」により給与から天引きされますが、その後は「普通徴収」に切り替わり、自身で市町村に納付することになります。ただし、次の勤務先で「特別徴収継続」の手続きをすれば翌月分以降は新たな勤務先から継続して特別徴収・納付となります。

 では、退職日が1月1日以降の場合はどのような手続きになるのでしょうか?

 

◆特別徴収継続か一括徴収かの分岐点

(1)退職後も継続し勤務先がある場合

 退職日が1月1日から4月30日までの場合で、退職後も次の勤務先(=給与支払者)があるときは、退職月の翌月10日までに「特別徴収継続」の手続きをすれば翌月分以降は新たな勤務先から継続して特別徴収・納付となります。

 退職日が5月1日から5月31日までの場合は、5月分のみですので、通常通りの住民税額が最後の給与から徴収されます。

(2)勤務先がないか空白期間がある場合

 退職後次の勤務先が決まっていなかったり、決まっていても次の給与までに空白期間があったりする場合は、退職する会社が5月分までを一括徴収し納付しなければならないこととなっています。

 ただし、退職時点で支給される給与や退職金から一括徴収額を差し引きしても納付額が足りない場合は、その分の金額を普通徴収で納付することになります。

 

◆特別徴収継続の場合は速やかに手続きを!

 いつの時点で退職するにせよ、「特別徴収継続」の手続きは、「給与所得者異動届出書」を提出することにより行われます。旧会社ではそれまで特別徴収して納付した金額の実績を記載し、新会社では今後の特別徴収と納付を行う旨の記載をします。この届出書は会社を通して提出することになりますので、新旧会社の給与計算担当者とよく相談して、書類の不備や理解不足による住民税延滞にならないよう注意が必要です。  

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(注意)
上記の記載内容は、2023年3月18日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年1月27日

フリーランスガイドラインとは

 

◆拡大するフリーランスの現状

 デジタル化の進展により、事業組織のフラット化やネットワーク化が進み、インターネットを介し個別にサービスを提供できるビジネスモデルが拡大しました。また、特定の企業や時間、場所等に縛られない自由な働き方を選択する人も増加しています。さらに国もフリーランスを始めとする「雇用関係によらない働き方(多様な働き方)」を成長戦略の1つとして推進しています。

 一方でフリーランスを雇用関係で働く労働者と比較すると、各種労働法や社会保険法等による保護が十分ではなく、フリーランスの現状は必ずしも安心して働ける環境になっていません。そこで国はフリーランスガイドライン(フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン)を策定しました。

 

◆フリーランスガイドライン

 フリーランスガイドラインは2020年7月の成長戦略実行計画の閣議決定を受け2021年3月に策定されました。また同ガイドラインは内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁(経済産業省)・厚生労働省の連名で策定されていることから、フリーランスの保護の問題は多岐にわたることがわかります。

 

◆フリーランスガイドラインの基本的考え方

 フリーランスガイドラインで定義されるフリーランスとは「実店舗がなく、雇人もいない自営業者や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とされています。これらフリーランスについて一義的には独占禁止法又は下請法で保護することを予定しています。一般的にフリーランスは交渉力などの格差から一方的に不利な条件の契約になりやすい面があり、発注業者が不当な契約で不利益を与えれば、フリーランスが競争相手との関係でも不利になり、公正かつ自由な競争を促進することを目的とする独占禁止法やその補完を目的とする下請法に抵触することになります。そこでフリーランスとの取引には独占禁止法や下請法の規制により、フリーランスが安心して取引ができる環境づくりをすることになります。  

 

◆フリーランスと労働法の関係

 一義的には独占禁止法や下請法で保護されるフリーランスですが、請負契約等の名目でも、実態が雇用契約であると認められる場合には、実態の労働者性に着目し、労働法による保護が優先されます。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年1月27日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年1月27日

コンビニの適格請求書登録番号は店舗ごとに違う可能性大

 

◆適格請求書保存方式開始まで1年を切った

 令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式が適格請求書保存方式(いわゆるインボイス方式)となります。

 インボイスとは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類するものをいいます。インボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限られます。インボイス発行事業者となるためには、登録申請手続を行い、登録を受ける必要があります。登録を受けた事業者には国税庁から登録番号が通知されます。仕入れる側は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で請求書等に記載されている登録番号が正しいものであるかどうかの確認ができます。

 

◆フランチャイズの店舗は事業者が別の者?

 コンビニエンスストアなどフランチャイズ方式で展開されている事業は、店舗の事業主はコンビニ本部の会社ではなく、加盟店オーナーの個人事業もしくは法人となります。そのため、適格請求書発行事業者の登録番号も、コンビニ本部の番号ではなく、その店舗の事業主の登録番号となります。フランチャイズ本部の直営店もありますので、その場合は本部の会社名となります。  仕入税額控除の要件となる帳簿の記載事項には、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」があります。フランチャイズの場合、コンビニチェーン名だけではなく、店舗名までの記載が必要だということになります。

 仕入税額控除の要件となる帳簿の記載事項には、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」があります。フランチャイズの場合、コンビニチェーン名だけではなく、店舗名までの記載が必要だということになります。

 

◆相手方登録番号の帳簿記載は不要です

 仕入税額控除に際しての記帳要件は、令和5年10月1日以降も現在の区分記載請求書等保存方式と同様であり相手方登録番号の記載は不要とされています。よって、経理入力時に登録番号入力の懸念は不要です。

 とはいえ、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトとの登録番号の検証機能を備えた会計ソフトを使っている場合、正しい名称で登録すると実在性の確認もできるので、自社の会計ソフト次第では、入力した方が便利な場合があるかもしれません。

出張経費の精算でコンビニ利用の実額を旅費としている場合、現在でも、食料品は軽減税率の8%、その他は10%、レジ袋も標準税率の10%と、確認と記帳に他のレシートの3倍くらい時間が掛かります。 買い物には便利なコンビニですが、消費税の面から見ると、少し面倒な存在です。

<情報提供:株式会社エッサム>

(注意)
上記の記載内容は、2023年1月27日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

■2023年1月13日

労働生産性と健康経営

 

◆「健康経営」とは

健康経営とは従業員の健康にかかる支出をコストではなく投資として捉える戦略的な経営手法のことです。

 

◆体調不良に伴う労働生産性損失

 労働生産性と健康経営との関係を考えるうえで大切な概念が2つあります。

 「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」です。体調不良による労働生産性の損失と言われると、何らかの身体的な病気で会社を休むという状況を思い浮かべるのではないでしょうか。これは「アブセンティーズム」と言います。

一方で出勤はしているものの体調がすぐれず生産性が低下している状態を「プレゼンティーズム」と言います。

近年労働生産性損失の関連で注目されるのが後者の「プレゼンティーズム」です。なぜなら欧米を中心とした多くの研究でプレゼンティーズムによる労働生産性の低下による経済的損失の方が、アブセンティーズムによる経済的損失より大きいという結果が示されているからです。

 

◆プレゼンティーズムによる労働生産性低下

 プレゼンティーズムの原因としては、慢性疲労症候群、うつ病、腰痛、頭痛、花粉症に代表されるアレルギー症などが挙げられます。例えば毎年花粉症の症状に悩まされる人は花粉症の時期になると目のかゆみや鼻詰まり、止まらないくしゃみなどの影響で仕事に集中することができないというイメージが自身の体験からも湧くかと思います。また、さらに女性に関しては女性特有の健康課題による労働生産性の低下が社会的な課題として注目され始めています。  

このような状態の時には労働生産性が低下し、結果的に企業の損失につながっていることがお分かりいただけると思います。

 

◆労働生産性と健康経営の関係

 「プレゼンティーズム」も「アブセンティーズム」も、心身の健康や生活習慣の良くない従業員ほど高まる傾向が確認されています。  顕在化しているリスクはもちろん潜在的なリスクのある従業員に対して、若年層を含め健康意識の低い段階で会社側から積極的に健康に関する働きかけをすることが、結果として自社の労働生産性損失を抑えることにつながります。

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上記の記載内容は、2023年1月13日現在の情報に基づいて記載しております。
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■2023年1月13日

インボイス制度 免税事業者の選択と経過措置

 

◆免税事業者はインボイスで選択を迫られる

 令和5年10月開始のインボイス制度は、免税事業者の方に選択を迫ります。免税事業者のままでいた場合、今まで認められていた取引相手の仕入税額控除が減ってしまう可能性があるからです。

 

◆課税形態によって異なる取引相手への影響

 では、実際どんな取引相手に影響があるのかを見てみましょう。

①自分が免税事業者、相手も免税事業者

お互い消費税の納税義務が免除されているので、影響はありません。また、取引相手が消費者の場合も、仕入税額控除を行わないため、影響はありません。

②自分が免税事業者、相手が簡易課税制度適用の課税事業者

簡易課税制度は「みなし仕入れ率」で売上に係る消費税額から控除を行うため、適格請求書を発行していない免税事業者相手でも影響はありません。

③自分が免税事業者、相手が課税事業者

簡易課税制度でない課税事業者は、令和5年10月以降は適格請求書がなければ、仕入税額控除ができません。ただし、令和5年10月から最初の3年間は免税事業者の請求する消費税額の80%、次の3年間は50%を仕入税額控除可能です。

つまり、③の場合は経過措置の適用があっても、取引先は今までよりも仕入税額控除額が減り、消費税納税額が増えるため、免税事業者との取引については購入価格の実質的な値上がりが起きてしまうのです。

 

◆課税事業者になるか、ならないか?

 免税事業者が課税事業者になり、適格請求書発行事業者登録をすれば、課税事業者の取引先との関係は継続しやすいでしょうが、消費税の納税義務が発生するため、現状の売上のままだと利益は減少します。  逆に免税事業者のままでいると、取引先の仕入税額控除が減るため、関係に影響が出る可能性があります。また、免税事業者が消費税を請求して受け取る権利はあるものの、あえて消費税を含まない請求に変更した場合は、現状より利益は減少します。

 免税事業者の方は、経過期間の80%・50%の仕入税額控除、取引先の状況、取引先との関係値等、様々な要因を加味して、いつから適格請求書発行登録をするのか、はたまたしないのかを決めることになります。価格改定の話をしなければならないケースも出てくるのではないでしょうか。

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■2023年1月5日

労働生産性と働き方改革

 

◆労働生産性と働き方改革の関係

 「生産性=成果÷投入量」ですので「労働生産性=付加価値÷総労働時間」となります。

 国が推し進める「働き方改革」の目的は一貫してこの「労働生産性の向上」です。労働生産性の算式を見てわかる通り労働生産性を上げるには「付加価値を上げる」か「総労働時間を下げる(短くする)」しかありません。既に実施されている各種の働き方改革の施策、例えば「罰則付き労働時間上限規制」や「年次有給休暇の取得義務化」などは後者の「総労働時間を下げる(短くする)」ための施策で、「働き方改革フェーズⅠ」といわれるものです。これに対して「働き方改革フェーズⅡ」といわれる施策も進められようとしています。つまり、これからの働き方改革の施策は「付加価値を上げるため」のものということができます。

 

◆働き方改革フェーズⅡ

 働き方改革フェーズⅡについての具体的な施策はまだ施行されていませんが、内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針(以下「基本方針」)2021及び2022」でその方向性が示されています。まず、2020年の世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響後に作成された基本方針2021では、「感染症の影響からテレワークの拡大などの変化を後戻りさせず、働き方改革を加速させる」とし、そのうえで「労働時間の削減等を行ってきた働き方改革のフェーズⅠに続き、メンバーシップ型からジョブ型の雇用形態への転換を図り、従業員のやりがいを高めていくことを目指すフェーズⅡの働き方改革を推進する」と謳っています。ここで注目すべきはフェーズⅡの目的を「従業員のやりがいを高めること(エンゲージメントを高めること)」とし、そのための手段として「雇用形態をメンバーシップ型からジョブ型へ転換すること」としていることでしょう。基本方針2021を受けて作成された基本方針2022では、従業員のやりがい(エンゲージメント)を高めるための多様な働き方の選択やそのための環境整備のための施策が謳われています。いくつか例を挙げると「副業・兼業」「リスキリング」「労働条件の明確化」などは早期の法制化や財政支援が見込まれています。

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■2023年1月5日

借り上げ社宅の社会保険料-現物給与価額は厚労省告示

 

◆社宅使用料は所得税法と社会保険法で違う

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)では、標準報酬月額を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、残業手当等諸手当、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。社宅などの住宅の貸与も現物支給に含まれます。

 所得税法では、その物件建物の固定資産税の課税標準額をもとに所定の計算をし、賃貸料相当額の計算をし、受取家賃との差額で経済的利益発生(=給与課税)の有無を認識します。

社会保険では、現物で支給されるものが、食事や住宅である場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨換算します。

 

◆社会保険料算定のための現物給与計算

 住宅で支払われる現物支給等である場合、1人1か月当たりの住宅の利益の額は(畳一畳につき)いくらと、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」で都道府県ごとに決められています。

 ここで計算される住宅面積は、居住用の室で計算します。住宅面積が㎡で表示されている場合、1畳あたり1.65㎡に換算して計算します。もし、勤務地がA県、社宅がB県にある場合、現物給与価額は勤務地であるA県による価額で計算します。

(住宅貸与の通貨への換算額)=(住宅面積)÷ 1.65㎡ ×(都道府県ごとの価額) となります。都道府県ごとの価額は、日本年金機構のホームページで確認できます。

被保険者(社員)から住宅費用を徴収している場合は、換算額から徴収額を差し引いた額が報酬額となります。換算額と同額以上の住宅費用を徴収している場合は、住宅貸与による報酬の額はゼロとして取り扱われます。

 

◆所得税法と社会保険法でどちらが優先?

 それぞれの規定で経済的利益の課税や現物給与発生の有無が決まってくるので、借り上げ社宅の場合、両方の計算をして、入居者から徴収する金額を決める必要があります。

 地域によっては、社会保険の現物給与額の方が所得税計算よりも高く算定されることもあるようです。往々にして所得税の経済的利益の有無の確認のみで安心しがちです。社会保険料の計算にも影響を与えないかどうか、社会保険労務士さんにも相談して手続きを進めることがおすすめです。

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(注意)
上記の記載内容は、2023年1月5日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。